CSRと内部統制~架空資産の排除~

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架空資産化のメカニズム

以前、クライアントであるお客様から次のようなご質問を受けました。

当社では物理的な劣化・老朽化に関係なく、ブランド力を維持向上させるために、建物を建設後15年から20年でエントランスホールやトイレなどの大事な部分をバリューアップしています。例えばトイレなら、床のタイルをはがして新しいタイルや一部に石をはったりします。壁も同様です。天井はフラットな天井を取り壊し、柔らかな曲線をもったデザイン天井に張り替えます。この時に、トイレブースや扉も更新し、天井の照明器具を取替え、便器なども最新の節水型温水洗浄便器などにグレードアップしています。女性用ブースには電子流水音を流す流水擬音装置、小便器前には人感センサーを付けて、節水にも心がけています。ところで、取り壊した建物勘定の資産はまだ3~4割しか償却していないのに、新たな資本的支出が簿価に加わります。つまり、既に存在しない架空資産が、簿価に残っている訳です。何とかならないものでしょうか?

これは、バリューアップ工事を行った際の「資本的支出の会計処理」が曖昧な(建物の実体に基づいていない)ために引き起こされる現象です。

現行基準において、資本的支出を処理する場合は、「法人税基本通達」による「形式基準」や、「価額(価値)を増加させる部分に対応する金額」や「使用可能年数(耐用年数)を延させる部分に対応する金額」などといった、きわめてアバウトな考え方に基づく処理が主流となっています。つまり、工事の具体的な内容や工事前後の建物の物理的な変化などを吟味して処理することが、全くといっていいほど行われておりません。

建築学と企業会計の融合

私たちは上記のようなご質問を受けた後、一級建築士・技術士(建設部門)・税理士・不動産鑑定士からなる専門家チームを発足させ、税務会計・不動産鑑定評価・建築技術・積算といったあらゆる側面から、クライアント様の物件についての独自調査を行ったところ、『既に存在しなくなった建物の一部が、会計帳簿(建物勘定)に未償却残高としてそのまま取り残されていた』という現象が、数多くの物件で確認されました。つまり帳簿価額が実際よりも「水ぶくれ状態」になっていたということです。

この状態を放置していると、物理的には既に無くなってしまったモノが、外部公表用の財務諸表には「存在している」と表示されていることになります。このような場合は、企業会計(税務会計)に加えて、建物の建築や工学系の知識を活用し、竣工図面や工事内訳書などを精査した上で、『除却(帳簿価額のオフバランス)』の処理を行うことによって、帳簿価額の適正化に努める必要があります。

おかげさまで上記の質問をされた企業では、除却管理システムを構築し、「建物の一部除却」を実現しています。

財務コンプライアンス

数年前、米国においてエンロン事件やワールドコム事件といった巨額粉飾・不正監査事件が多発したのをきっかけに、日本においても不正や誤りを防止する仕組みが十分機能していない企業が多いことが認識されました。また最近では、CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)や内部統制(財務報告における不正や誤りを防止するための経営者が主体となった整備・運用)といった経営思考が、わが国においても多くの業界において取りざたされるようになりました。つまり、企業が担うべき説明(報告)責任やコンプライアンスの対象が劇的に拡充されたことを意味します。

また他方では、今後、環境問題(循環型社会の形成)や高齢化(福祉施設の増加)といった社会的なニーズの変化(多様化)にともなって、既存の建物を壊さずに新たにバリューアップを施したり、これまでの機能とは別な機能を持ったものへとその用途を変更したりといった「使い続ける選択肢」が、「資本的支出」の機会を飛躍的に増加させていきます。もちろん現行基準が採用される限りにおいては、上記のような帳簿価額の水ぶくれ現象が、無視できない規模にまで増大する可能性は極めて高くなります。

私たちは、近い将来、経済社会から要請される「資本的支出の件数の増加」の事態に柔軟に対応するためにも、確かな帳簿価額を財務諸表に反映させるシステムをご提供することを通じて、クライアント様のCSRや内部統制の実効性を促進し、ひいては持続可能な社会の一員としての企業価値の創造に大きく寄与することを確信いたしております。

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